Firefly stories

フィリピンのホタルと 川のすみか

フィリピンのホタルと 川のすみか
(c) Andy Deans, some rights reserved (CC BY)

暗い熱帯の川で、小さな木製ボートに乗っているところを想像してみてね。岸は真っ暗で見えません。水面はまるで黒いガラスのようです。すると、ガイドさんがボートのモーターを止めました。あたりはしーんと静まりかえります。そのとき突然、川の岸辺にある1本の木がパッと光りました! ほんの少しチラチラ光るだけではありません。何百もの小さな緑黄色の光のつぶが、いっせいにリズムをあわせてピカッ、ピカッと光るのです。まるでジャングルの真ん中に立つ、ピカピカ輝くツリーのよう。数秒後、川の向こう岸にある別の木も、お返事するように光りは締めました。

これは、フィリピンの川べりで毎晩見られる光景です。フィリピンで一番広く話されているタガログ語で、ホタルのことを「アリタップタップ(alitaptap)」と言います。このサイトの名前も、そこからつけられました。でも、この川の虫たちの物語は、名前の由来だけでは終わりません。特別な木々や、地元の川のガイドさんたち、そしてみんなで取り組む科学(市民科学)の、ステキなお話なのです。

島々でちがう、光る虫の呼び名

フィリピンは、7,000以上もの島からできている国です。だから、住む地域によってたくさんのちがう言葉が話されています。タガログ語では「アリタップタップ(alitaptap)」ですが、ほかの島ではちがう名前で呼ばれています。

真ん中あたりの島々で話されるビサヤ語では、ホタルのことを「アニニポット(aninipot)」と呼びます。パナイ島やネグロス島などのヒリガイノン語の地域に行くと、「ドゥルドゥル(duldul)」や「イタップタップ(itaptap)」という言葉を聞くかもしれません。また、大きなルソン島の北部で話されるイロカノ語では、「クラランティ(kullalanti)」と呼ばれています。

呼び名はちがっても、みんな同じ魔法のような素晴らしい光景を表しています。何百年も前から、フィリピンのお父さんやお母さんは、この光る虫の昔話を子どもたちに語りついできました。暗い森で道に迷った旅人を家に案内するために、ホタルが小さなランタンを持っているんだよ、と伝える古いお話もあります。

なぜフィリピンのホタルは川の近くに住んでいるの?

北アメリカやヨーロッパに住んでいる人なら、原っぱでホタルを見るのに慣れているかもしれません。私たちの投稿マップにも、草の生えた公園や庭からの報告がたくさん届きます。例えば、「アリタップタップ」の最近の投稿では、ニューヨーク州ロチェスターやミシガン州クリントン・タウンシップなどの場所で Common Eastern Firefly が見られています。これらのホタルは、芝生や庭のしげみの上をフワフワと飛んでいます。

でも、フィリピンのホタルの多くは、ちょっとちがう暮らしをしています。彼らはマングローブの森を頼りにして生きているのです。マングローブとは、海の潮と川の真水がまざりあう、しょっぱい川の泥に生える特別な木のことです。この木には、竹馬のように水の中から突き出た、からまりあった太い根っこがあります。

フィリピンにある3つの有名な川は、ホタルが集まる木があることで世界中に知られています。

  • パラワン島のイワヒグ川。ここは静かなマングローブの森を流れる川で、頭上をおおう枝の下をボートが静かに進みます。
  • ボホール島のアバタン川。ここでは、どこまでも続くマングローブが、川の虫たちのための大きな暗いトンネルを作っています。
  • ソルソゴン州のドンソール川。ドンソールは湾に現れる巨大なジンベエザメで有名ですが、内陸の川はホタルたちの世界です。

このマングローブの中で、ホタルたちは決まった木に集まります。地元で「パガットパット(pagatpat)」と呼ばれる Sonneratia の木が大気に入りです。たった1本の木に、何千匹もの大人のホタルがいっせいに集まることもあるんですよ!

マングローブの泥の中でのくらし

なぜホタルはそんなにマングローブの木が大好きなのでしょう? そのこたえは、木の幹の一番下にあります。

アリタップタップ(alitaptap)が羽を生やして夜空を照らすようになる前、数か月間を「幼虫」として過ごします。ホタルの幼虫は、よろいをまとった小さなイモムシのような姿をしています。幼虫は木の上には住んでいません。根っこの近くの、しめった川の泥の中をはって暮らしています。

そのドロドロした地面には、食べ物がいっぱいです。ホタルの幼虫はハンターです! 湿った土の中に隠れている小さなカタツムリやミミズ、体のやわらかい虫を探して食べます。マングローブの木の根っこは、幼虫を大きな波や魚から守ってくれます。そして、潮が引いても、分厚い泥のおかげでしめりけが保たれるのです。

もし泥が乾いてしまったり、汚れてしまったりしたら、カタツムリは死んでしまいます。カタツムリが死ぬと、ホタルの幼虫はお腹をすかせて死んでしまいます。そうなると、次の年に木を光らせる新しい大人のホタルが生まれなくなってしまいます。川の生態系は、パズルのようにすべてがつながっているのです。

Rimmed Window Firefly
(c) 祐, some rights reserved (CC BY)

地元のガイドさんたちが川を守る方法

長い間、マングローブの森は魚の養殖池を作ったり薪(まき)にしたりするために切り倒されてきました。また、川べりのすぐ近くに明るい街灯が建てられました。人工のまぶしい光がマングローブの木を照らすと、ホタルはお互いの光の合図が見えなくなってしまいます。すると混乱して、仲間をみつけられなくなってしまうのです。

現在、イワヒグ川、アバタン川、ドンソール川の沿岸にある地元の町では、マングローブを守る取り組みが進められています。地域の人たちが中心となって、環境にやさしいエコツアーを作りました。木を切り倒すかわりに、地元の人たちがボートの船長やネイチャーガイドとして働いています。

ガイドさんたちは、虫たちを守るためにきびしいルールを守っています。

  1. カメラのフラッシュは禁止。フラッシュの光はホタルを驚かせ、光の合図をジャマしてしまいます。
  2. うるさいガソリンエンジンは使わない。多くのガイドさんは手こぎのカヌーや電気ボートを使うので、エンジンの煙で木の葉が汚れることもありません。
  3. 木には絶対に触らない。枝がゆれないように、ボートは安全な距離を保ちます。
  4. 川を暗く保つ。近くの町も協力して、街灯の光が川に向かないように工夫しています。

このようなツアーのおかげで、地元の家族は生活を支えながら川を元気に保つことができます。生きているホタルが世界中からお客さんを呼んでくれると分かると、マングローブの森はみんなで大切に守りたい宝ものになるのです。

世界中の発見報告が教えてくれること

ホタルの仲間は、南極をのぞくほぼすべての大陸に住んでいます。私たちのサイトでは、世界中の人たちが色々な場所で虫を観察して記録しています。台湾の人が山道で Rimmed Window Firefly を見つけたと報告してくれるかもしれません。ドイツの観察者が、短い草の中をはう European Glow-worm を見つけることもあります。そのころ北アメリカでは、何千人もの人たちが夏の夕方に Common Eastern Firefly を記録しています。

これらの記録はすべてとても大切です。でも、フィリピンのアリタップタップ(alitaptap)のような熱帯の川に住むホタルは、庭に住むホタルとはちがうピンチに直面しています。庭に住むホタルは、農薬があまり使われていなければ、郊外の公園でも生き残れることがあります。でも川のホタルは、マングローブの森がなくなってしまったからといって、ただ公園におひっこしするわけにはいきません。

みんなのような「市民科学者」が海岸や熱帯の川の近くでの発見をマップに記録すると、研究者たちは元気に生きているホタルがどこに残っているかを知ることができます。昔は何千匹も光っていた川から投稿がなくなったら、水や光の公害がその川を傷つけているかもしれない、と科学者たちが気づくことができるのです。

どこにいてもホタルを助ける方法

ホタルを守るために、パラワン島のマングローブまで行く必要はありません。同じ大切なルールが、みんなの家のすぐ外でも役に立ちます。

使わない夜の外灯は消して、お庭を暗く保ちましょう。庭のすみに落ち葉やしめった土を残しておくと、幼虫が食べ物を探せます。芝生に強い薬品(農薬)をまくのもやめましょう。

そして一番大切なのは、目をしっかり開けておくことです! 木の中や原っぱ、小川の近くでピカッと光るのを見つけたら、ぜひ時間をとって記録してみてください。「アリタップタップ」と呼んでも、「アニニポット」と呼んでも、ツチホタルやホタルと呼んでも、あなたの投稿が、このマップの上でホタルの光をこれからもずっと輝かせ続ける力になります!

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Written with AI help from real firefly sighting data, then checked by a human before publishing.