8月の暖かい夜、世界中の人たちが外に出てホタルを眺めます。私たちの Alitaptap マップには、最近ミシガン州アナーバーやノースカロライナ州ダーラムで Common Eastern Fireflies を見つけたという報告が届きました。海を越えたドイツのビスマルクやスイスのシュレでは、European Glow-worms が暗い草むらで静かに休んでいるのが見つかっています。ホタルは夜空だけにいる生きものと思いがちですよね。
でも、それはホタルの生活のほんの一部にすぎません。大人のホタルが生きられるのは、たったの数週間です。木々の間を飛んだり光ったりする前に、ホタルは1年から2年もの間、地面の上や土の中でくらしているのです。ホタルはしめった土の中、腐った木の下、落ち葉のかげなどに隠れています。
土の中にいるホタルの赤ちゃんは「幼虫(ようちゅう)」と呼ばれています。ホタルの幼虫は、ちいさくて平らな、よろいを着た虫のように見えます。羽がないので飛ぶことはできません。そのかわり、しめった土の中をはいい回りながら食べものを探します。実は、幼虫はとっても活発なハンターなのです。大好物はカタツムリやナメクジ、やわらかいミミズです。
カタツムリを食べるとき、ホタルの幼虫はかみついて特別な液を注入します。するとカタツムリの中身がやわらかいスープに変わるので、幼虫はそれをゴクゴクと飲み干します。1ぴきのホタルの幼虫は、大人になるまでに何十ぴきものカタツムリを食べることがあります。
土の中に安全に暮らせる場所がなければ、幼虫は決して大人のホタルに変身することができません。ところが今、たくさんのホタルの赤ちゃんが、私たちの足もとで大きな危険に直面しています。
庭の虫よけスプレーの問題点
多くの家主や庭のお手入れ業者は、芝生をきれいな緑のじゅうたんのように保ちたがります。でも、邪魔な虫や雑草を追い払うために、草に化学薬品の毒を吹きかけることがよくあります。このようなスプレーは農薬や殺虫剤と呼ばれています。
殺虫剤は虫を退治するために作られています。大きな問題は、薬品のスプレーがやっつける虫を選べないことです。蚊や芝生の害虫だけを狙って、ホタルをよけてくれるわけではありません。だれかが芝生に虫よけのスプレーをまくと、その毒は土の一番上の層にすーっとしみ込んでいきます。
そして、その土の一番上の層こそが、ホタルの幼虫がくらして獲物を探しているまさにその場所なのです。
ホタルの赤ちゃんが庭の毒に触れると、すぐに死んでしまうことがあります。たとえスプレーで直接死ななかったとしても、食べものがダメになってしまいます。殺虫剤は庭のカタツムリやナメクジ、ミミズを殺してしまうからです。もしホタルの幼虫が毒の回ったカタツムリを食べたら、幼虫まで病気になってしまいます。もし庭のカタツムリが全滅してしまったら、ホタルの赤ちゃんは羽が生えるはるか前に、お腹をすかせて死んでしまいます。
雨が降ると、これらの薬品スプレーが草から洗い流されることもあります。毒は近くの花だんや家庭菜園、ちいさな小川へと流れていきます。つまり、化学スプレーは、薬品をまいた場所から遠く離れた場所にいるホタルにまで害を及ぼすことがあるのです。
きれいに掃除しすぎた庭も問題に
化学物質の虫よけスプレーだけが、ホタルの赤ちゃんにとっての脅威ではありません。もうひとつの問題は、人々が庭や公園をどのように掃除するかから生まれます。
ホタルの幼虫が生きていくためには、しめり気が必要です。土が熱くなったり乾燥したりすると、やわらかい体がすぐに乾いてしまいます。自然の中では、秋の落ち葉や枯れ枝、背の高い草が、土の上で湿ったスポンジのような役割を果たします。落ち葉は雨や朝露をため込みます。そして強い日差しをさえぎり、地面を涼しくしめった状態に保ってくれます。このしめった土は、カタツムリやミミズ、ホタルの赤ちゃんにとって最高の家になります。
でも、落ち葉を一枚残らず集めたり、ウッドチップをすべて取り除いたり、毎週草を短く刈り込みすぎたりすると、地面の様子が一変します。暑い夏の太陽がむき出しの土に直接あたり、地面は乾燥してレンガのようにカチカチに固くなってしまいます。
カタツムリやナメクジは、かたくて乾いた土では生きていけません。どこかへ逃げてしまうか、死んでしまいます。湿気と落ち葉のカバーがなくなると、ホタルの幼虫は食べものも隠れ家も失ってしまうのです。きれいに削り取られ、短く刈り込まれた庭は、ホタルの赤ちゃんにとって砂漠のようになってしまいます。
マップが教えてくれること
Alitaptap では、市民科学者たちがさまざまな国からホタルの観察記録を投稿しています。彼らのレポートは、ホタルがどこで生き残っているのかについての明確なヒントを与えてくれます。
たとえば、ブラジルのマカパにいる観察者は、最近しめったアマゾン川流域の近くで Aspisoma lineatum を見つけました。別のユーザーもパラグアイのアスンシオンで同じ種類を発見しました。これらのホタルは、地面の湿気を閉じ込めてくれる湿った土と豊かな植物に頼って生きています。
テキサス州ウッド郡では、Alitaptap のユーザーが Pleotomus pallens を見つけました。この種類のメスは飛ぶことができません。地面のすぐ近くにとどまり、健康なグランドカバー(下草)に完全に頼ってくらしています。インドのネロールでは Abscondita anceyi が、イタリアのカレンツァーノでは Lampyris fuscata fuscata が見つかりました。
アメリカでは、ペンシルベニア州アボンデール、イリノイ州アーバナ、ウェストバージニア州ホイーリング、さらにはニューヨーク市のブルックリン・ブリッジ・パークなどの場所で、ユーザーが Common Eastern Fireflies を報告しています。
これらの場所に共通していることがわかりますか?大きな街やにぎやかな町であっても、やわらかい土、湿った落ち葉、日陰がある場所にはホタルがあらわれるのです。もしそうした場所で強い殺虫剤がまかれたり、土がむき出しになるまで掃除されたりしたら、ホタルはマップから消えてしまいます。
お庭でホタルを助ける4つの方法
ホタルを守るために、特別な道具やたくさんのお金は必要ありません。庭の手入れ方法を少し変えるだけで、何百ぴきものホタルの赤ちゃんを救うことができます。今日からあなたとご家族で実践できる4つの簡単なステップを紹介します。
1つ目は、庭で化学物質の虫よけスプレーを使うのをやめることです。蚊の駆除スプレーや害虫用の薬剤はお休みしましょう。もし蚊が気になるなら、水たまりに「モスキート・ダンク」のような天然の水質処理剤を使ってみてください。これらはホタルや土の虫を傷つけることなく、蚊の幼虫だけをターゲットにする安全な細菌を使っています。
2つ目は、草を伸ばしたままのエリアを残すことです。庭全体を野原にする必要はありません。庭のすみのちいさな場所や、フェンスに沿った場所を選んでみましょう。そこで草を長めに伸ばしておくのです。夏の間はその場所の草刈りを控えましょう。背の高い草は土の中に湿気を閉じ込め、大人のホタルが昼間に安心して休める場所になります。
3つ目は、秋の落ち葉を花だんに残しておくことです。秋に木々が葉を落としたとき、すべてをビニール袋につめ込んで捨てないでください。落ち葉を集めて花だんや木の下、低木のまわりに敷いてあげましょう。枯れ葉を残しておくと、ホタルの幼虫にとって温かくて湿った冬の毛布になります。幼虫はその落ち葉の下で冬越しをし、春になると元気に狩りを始める準備をして目をさまします。
4つ目は、その土地本来の植物(在来植物)を植え、土をしめらせておくことです。その土地で昔から育つ植物は根が深く、土の中に水をため込む力があります。ちいさなレインガーデンを作ったり、厚めのウッドチップを敷いたりすることで、乾燥した夏の時期でも土の湿気を保つことができます。
ホタルを見つけたら記録しよう!
庭を整えることは素晴らしい第一歩ですが、科学の力になることでもホタルを助けることができます。ご近所や公園、小川の近くでホタルを見かけたら、どこにいたかをメモしておきましょう。そして Alitaptap や iNaturalist であなたの観察記録をシェアしてみてください。
みんなが発見を記録すると、科学者たちはマップを見てホタルが元気にくらしている場所を確認できます。化学薬品がたくさんまかれている地域と、自然なお庭や落ち葉の山がある地域を比べることができるのです。あなたの観察記録は、ホタルの生き残りを助けるために何が有効かを示す、大切な証拠になります。
殺虫剤を使うのをやめたり、落ち葉を少し残したり、見つけたホタルをシェアしたりすることで、あなたもホタルがこれからもずっと光り続けられるように助けることができるのです。
