暗闇への一歩
夜に外に出てホタルを探すとき、あなたの目は慣れるまでに少し時間がかかります。明るい家の中にいるとき、ひとみはとても小さくなっています。暗い庭に一歩踏み出すと、月の光を少しでも取り込もうと、ひとみは大きく開きます。これを暗順応と呼びます。目がすっかり暗さに慣れるには、20分ほどかかります。この間に、脳は影の中にある形を見分けるようになります。ドイツの草の上で休んでいるヨーロッパツチボタルや、ノースカロライナ州の木の近くでやさしく光る冬のホタルを見つけるかもしれません。もし誰かが明るい懐中電灯をつけたり、スマホのフラッシュで写真を撮ったりすると、その暗さへの慣れが一瞬で消えてしまいます。まぶしさに目がパッと閉じたり細まったりして、急な光が小さな虫たちのすてきな光を消してしまいます。
ホタルは、暗闇を頼りにしてお互いにコミュニケーションをとっています。ホタルの光は秘密の暗号です。オスは空を飛びながら、あいさつのために特定の光るパターンを送ります。庭や公園の葉の上で休んでいるメスは、自分の短い点滅で返事をします。明るい白い光が暗闇を切り裂くと、それは秘密の集まりでの巨大なスポットライトのようになってしまいます。虫たちは混乱します。光るのをやめてしまいます。近くに天敵がいると思って、茂みに隠れてしまうこともあります。ホタルと一緒に夜を過ごしたいなら、ホタルのルールを守らなければなりません。それは、手で触らず、ゆっくり歩き、光の使い方を変えるということです。
なぜ白い光やカメラのフラッシュがいけないのか
白い光には、虹のすべての色が混ざっています。ホタルにとって、その強い光は目がくらむほどまぶしいものです。カメラのフラッシュはさらにひどいです。虫が大切なメッセージを送ろうとしているまさにそのときに、強いエネルギーの光が突然ポンと光ります。公園の茂みに人々が集まって、フラッシュをつけて写真を撮ろうとスマホの画面をタップしはじめると、みんなの楽しみが台無しになってしまいます。まぶしいフラッシュにおびえて、虫たちは2、3回光ると完全に光るのをやめてしまいます。気づけば、光るスマホの画面以外には何も見えない暗闇の中にぽつんと立っていることになります。
ホタルを研究する科学者たちは、虫たちの夜をジャマせずに何をしているのかを見るための簡単なコツを使っています。懐中電灯に赤いプラスチックフィルムをかぶせたり、赤いLED電球を使ったりするのです。赤い光は白い光よりも波長が長いです。あなたの目は前方の道を確かめるのに赤い光を使えますが、ホタルには同じようには見えません。ホタルにとって、赤い光は深い影のように見えます。目をくらませたり、自然な点滅の暗号をジャマしたりすることはありません。虫を探しながらフィールドガイドを読んだり地図を確認したりしたいとき、赤い光は最高の相棒です。夜の視力を保ちながら、地元のホタルたちに光り続けさせてあげられます。
フラッシュを使わずに影の中で撮影する
市民科学の地図アプリ「Alitaptap」などに載せるために、光る虫の動画を撮りたいと思うことはよくあります。でも、スマホのフラッシュをつけても、ぼやけた葉っぱとおびえた虫が写るだけです。暗闇と戦うのではなく、暗闇を味方にしましょう。最近のスマホやカメラには、ナイトモードやスローシャッターと呼ばれる設定があります。これらの設定を使うと、カメラのレンズが少し長く開いたままになり、まわりの微かな光をすべて取り込むことができます。
この方法を使うには、手をとてもしっかり固定する必要があります。手がブルブル震えると、光る点が流星のように動画の中で線になってしまいます。フェンスの柱にひじを置いたり、木の幹にもたれたりしてカメラを安定させましょう。暗闇の中でオートフォーカスが前後にカチカチ動いてしまうときは、オフにしましょう。少し前に光るのを見た近くの小枝や葉っぱに、手動でピントを合わせます。じっと待ちましょう。虫が再び光ると、まぶしいフラッシュの助けを借りることなく、カメラのセンサーがやさしい黄色や緑の光を記録してくれます。
トレイルのよき隣人になるために
ホタル観察は、みんなで楽しむことが多いアクティビティです。コミュニティガーデン、ハイキングコース、川のそばなどに人々が集まり、夏や秋の光のショーを見物します。ほかの人たちと同じ場所で観察するとき、あなたの行動はその人たちの体験にも影響を与えます。原っぱで大声を出したり、白い懐中電灯の光をあちこちに向けて走り回ったりすると、虫を見に来たほかの人たちの魔法のような時間が台無しになってしまいます。
観察のマナーはシンプルです。家を出る前に、スマホの画面を下に向けるか、薄暗い赤のフィルターに設定しましょう。野生動物や近くに住む隣人たちのジャマにならないように、静かな声で話しましょう。写真を撮るなら、うっかり使ってしまうことがないように、家を出る前にフラッシュを完全にオフにしておきましょう。植物で休んでいるホタルを見つけても、捕まえたりビンに入れたりしてはいけません。ホタルの大人の寿命は短く、閉じた容器の中で隠れて過ごす時間はすべて、次の世代のためのパートナー探しや卵産みを逃してしまう時間になってしまいます。
暗闇を守るための小さな一歩を踏み出すことで、地元のホタルたちを安全に守る手助けができます。裏庭でヨーロッパツチボタルを見ているときも、木立の公園で冬のホタルを見つけているときも、あなたの思いやりが大きな違いを生みます。虫たちはジャマされることなく夜の時間を過ごすことができ、あなたは大自然の中の静かで素晴らしいショーを見ることができます。